植毛をしよう。
そう思ったからといって、すぐにクリニックを決められたわけではなかった。
僕には、分からないことが多すぎた。
切る方法と、切らない方法。
どっちがいいのか。
移植した髪は、本当に定着するのか。
自分の場合、何株くらい必要なのか。
後頭部から、そんなにたくさん採って大丈夫なのか。
そして、費用はいくらかかるのか。
僕の場合、値段が高いから迷っていたというより、
不安が自分の納得できるところまで解消されないと、そもそも施術まで進めなかった。
だからまずは、一つずつ調べることにした。
切るか、切らないか。調べても答えが出なかった
自毛植毛について調べると、大きく分けて「切る方法」と「切らない方法」があることを知った。
僕は、自分の場合かなりの株数が必要になると思っていた。
当時いろいろ調べたり、意見を見たりしていると、大量に株を採る場合は、切る方法にもメリットがあるという意見があった。
「1回目は切る方法、2回目は切らない方法」
そんな考え方もあった。
それを見て、僕は切る方法もかなり真剣に考えた。
切る方法で評価の良かったクリニックのレビューや質問への回答も、片っ端から読んだ。
でも。
読めば読むほど詳しくはなる。
詳しくはなるんだけど――
「で、僕の場合はどっちがいいんだ?」
結局そこが分からなかった。
僕が調べた範囲では、切る方法には大量採取に向いているという意見もあった。
一方で、後頭部に残る傷跡や術後の負担も気になった。
そして僕がかなり気にしていた、
「会社にバレないか」
にもつながってくる。
ネットで調べるだけでは、なかなか答えが出なかった。
とりあえず、アイランドタワーへ行ってみた
そんな中、最初に実際の相談へ行ったのが、アイランドタワークリニックだった。
当時の僕が行きやすい場所に院があったし、キャンペーンもやっていた。
だから、
「まあ、話だけでも聞いてみるか」
くらいの感じだった。
カウンセリングでは、植毛についての一般的な説明を受けた。
あとは、僕の場合何株くらいにするのか。
費用はいくらになるのか。
そんな話だった。
僕は3000株くらい入れたいと思っていた。
でも、3000株を後頭部から採ることには不安があるということで、提案されたのは2000株くらいだった。
費用は、当時の記憶では180万円前後だったと思う。
切る方法についても聞いた。
そのとき僕が受けた説明では、切る方法はデメリットが多く、切らない方法を勧めるというものだった。
かなりはっきりした説明だった。
ただ、僕の中には疑問が残った。
「2000株で、本当に足りるの?」
僕が一番引っかかったのは、株数だった。
僕自身は、
「2000株じゃ足りないんじゃないか」
と思っていた。
それでも、2000株くらいでかなり改善して、悩みも解決するという趣旨の説明を受けた。
もちろん、本当にそうなる可能性もあるのかもしれない。
でも、当時の僕はそこで納得できなかった。
後頭部からどれくらい採れるのかについて聞いても、「一般的には」という説明が中心だった。
僕が知りたかったのは、
一般的な人の話ではなかった。
「僕の頭なら、実際どうなの?」
そこだった。
アイランドタワーで説明を受けたことで分かったこともあった。
でも僕の場合、まだ施術を決められるところまでは不安がなくならなかった。
切る方法も、まだ捨てきれなかった
そのあとも調べ続けた。
切る方法で評価の良かったクリニックにも、実際に話を聞いてみようと思った。
ネットでいくら調べても分からないなら、直接聞けばもっと細かいことが分かるかもしれない。
面談を受ける直前まで話は進んでいた。
そんなときだった。
いろいろなクリニックを比較していた僕は、あるクリニックを見つけた。
アスク井上クリニックだった。
「なんでここだけ、こんなに評価高いんだ?」
最初に気になったのは、口コミだった。
口コミの数自体は、それほど多くなかった。
でも、
異様に評価が高かった。
しかも内容を見ていると、東京にしかないクリニックなのに、県外からわざわざ来ている人がいる。
中には、九州から東京まで行ったという人もいた。
僕は思った。
「そんなにいいところなの?」
それまでアスク井上クリニックのことは知らなかった。
だから、もう少し調べてみることにした。
そして僕は、メールで問い合わせをしてみた。
残っていた疑問を、全部ぶつけてみた
僕が送ったのは、
「植毛したいです。いくらですか?」
みたいなメールではなかった。
アイランドタワーで受けた説明。
3000株くらい入れたいと思っていること。
切る方法と切らない方法で迷っていること。
ドナーロスについて。
それまで調べても解消できなかった不安について、
「こういう説明を受けたんですが、どう思いますか?」
という感じで意見を聞いた。
すると、
めちゃくちゃ詳しい返信が返ってきた。
切る方法と、切らない方法。
それぞれのメリットとデメリット。
そして、手法そのもの以上に、医師だけではなく看護師も含めたチーム全体のレベルが大事だという考え方。
医師が良くても、チーム全体の技術が伴わなければ、いい結果にはつながらない。
アスクでは、その部分も徹底して教育していて、国内でも高いレベルにあるという自信がある。
そんな説明だった。
さらに印象に残ったのが、
切る方法なら国内では別のクリニック。
切らない方法なら当院。
というように、自分たちがやっていない方法については、他院も含めて意見をくれたことだった。
2000株についても、
範囲によっては密度が足りなくなる可能性があるけれど、そのあたりの説明はありましたか。
そんな確認までされた。
そして、
「実際に見てみないと分からないので、写真を送ってください」
となった。
アドバイザーさんが答えられることはアドバイザーさんが答える。
医師の意見が必要なところは、医師に確認して回答してくれる。
僕はそこにも安心感があった。
一般論じゃなくて、ちゃんと「僕の場合」を見ようとしてくれている。
そんな感じがした。
「この人、信頼できそうだな」
写真も送って、もう少し詳しく見てもらった。
そのあと、アドバイザーさんから、
「もう少し具体的な話をしましょう」
ということで電話で話すことになった。
詳しい内容ももちろん大事だった。
でも、それ以上に僕は、このアドバイザーさんを気に入った。
話していて、
「この人、信頼できそうだな」
と思った。
それで、東京までカウンセリングに行くことにした。
切る方法で評価の良かったクリニックにも相談する予定だったけれど、そちらはキャンセルした。
まずはアスクで、実際に僕の頭を見てもらおう。
そう思った。
3000株は不安と言われた僕の後頭部を見て、「8000はいけるね」
東京へ行き、実際にカウンセリングを受けた。
そこで後頭部も直接見てもらった。
アイランドタワーでは、3000株を採ることには不安があるという話だった。
でもアスクで実際に見てもらうと、
限界値だけでいえば、
「8000株くらいはいける」
という話になった。
僕は思った。
「え、全然違うじゃん」
ただし、ここは大事なところで、
「じゃあ8000株採りましょう」
という話ではない。
8000株というのは、本当に限界まで考えた数字。
現実的には、その半分くらいで考えた方がいい。
そこまで含めて説明してもらった。
限界値と、実際に考える数字。
そこを分けて話してくれた。
「僕、薬が効かないタイプだったの?」
そしてもう一つ。
この日のカウンセリングで、一番印象に残ったことがある。
メールの段階でも、
「AGAではない可能性がある」
という話は出ていた。
そして実際に頭を見てもらった。
そこで僕が受けた説明は、
薬が効かないタイプの薄毛だというものだった。
僕は20代から、ずっと薄毛に悩んできた。
薬も飲んだ。
ミノキシジルも試した。
それでも、自分が思っていたようには増えなかった。
そこで初めて、
「僕、薬が効かないタイプだったの?」
となった。
長いこと薬を飲んできた僕にとって、この話のインパクトはかなり大きかった。
3000株入れたかった僕が、約2200株にした
僕はもともと、3000株くらい入れたいと思っていた。
後頭部から採れるなら、3000株入れた方がいいんじゃないか。
そんな気持ちもあった。
でも、カウンセリングで説明を受けると、問題は「採れるかどうか」だけではなかった。
3000株を一度に採って移植すること自体にもリスクがある。
一日で集中して施術できる量にも限界がある。
だから、
まず2000株くらいで様子を見る。
それで納得できる結果にならなければ、2回目を考える。
そういう方法もあると提案された。
僕は、それならいいと思った。
さらに、生え際も少し整えた方が見栄えがよくなるという提案があり、そこも含めてお願いすることにした。
最終的に決めたのは、
約2200株。
面白いことに、最初にアイランドタワーで提案された2000株と、それほど大きく違わない。
でも僕の中で、納得感は全然違った。
僕に必要だったのは、
「たくさん植えられますよ」
という話ではなかった。
なぜ、この株数なのか。
そこを自分が納得できることだった。
約200万円。それでも、決めたあとは早かった
費用は、約200万円だった。
井上院長本人にお願いすると、もっと高かった。
そこで僕は、当時アスクに在籍していた別の先生に担当してもらうことにした。
クリニック側も、その先生なら任せられると太鼓判を押していた。
僕自身も、そこに特に不安はなかった。
ただ、施術を受けるにはもう一つ問題があった。
仕事だった。
僕の場合、施術後は東京で1泊する必要があった。
土曜日は予約がほとんど取れなかったので、金曜日に有給を取って施術を受ける。
そして一泊。
土日は休む。
さらに当時はコロナ禍だったので、理由をつけて翌週はテレワークにすることにした。
会社に絶対バレない。
そんな保証は、もちろんない。
これはもう、クリニック側にどうにかしてもらえる問題でもなかった。
最後は、自分で腹をくくるしかなかった。
でも、
どこで受けるのか。
何株にするのか。
いくらかかるのか。
施術後にどう過ごすのか。
そこまで具体的にイメージできるようになった。
僕の中にあった不安は、かなりなくなっていた。
「いったれー! これで人生取り戻したる!」
カウンセリングを受けた時点で、
「ここでやろう」
と決めていた。
あとは仕事の休みだけだった。
いったん仮予約をして、休みが取れることを確認。
本予約をした。
そして僕は――
すぐにお金をおろして、振り込んだ。
約200万円。
ここまで散々調べていたのに、決めたあとは早かった。
僕は、自分に必要だと思っていて、それが自分の許容できる範囲なら、不安さえなくなればあまり迷わない。
だから、そのときの気持ちは、
「200万円、本当に払っていいのかな……」
ではなかった。
「いったれー!」
だった。
そしてもう一つ。
「これで人生取り戻したる!」
20代からずっと髪を気にしてきた。
風を気にして。
髪型を気にして。
やりたいことまで避けることがあった。
その生活を、これで終わらせられるかもしれない。
そう思っていた。
約200万円。
約2200株。
東京で一泊。
もう予約もした。
お金も払った。
あとは――
植えるだけだった。

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