高校生の頃から、僕は少しM字だった。
とはいっても、その頃はまだ、
「僕、ちょっとM字だな」
くらいだったと思う。
本当に気になり始めたのは、20歳を過ぎてからだった。
22歳くらいになると、今までと同じように髪をセットしてもうまく決まらなくなってきた。
前髪が透ける。
鏡を見るたびに気になる。
「これ、やばいんじゃないか」
そう思うようになった。
ここから僕の、長い薄毛との戦いが始まった。
薬は最後の手段だと思っていた
最初から薬を飲もうとは思わなかった。
僕の中では、
薬は最後の手段だった。
だから、まずは薬以外でなんとかしようとした。
髪によさそうなシャンプーを使った。
頭皮クレンジングも使った。
頭皮マッサージもした。
髪によさそうなことを見つけては試した。
でも、
何をやっても変わらなかった。
24歳くらいになって、
「もう薬を飲むしかないな」
と思った。
クリニックを調べて、プロペシアを処方してもらった。
当時は1か月で9,000円くらいだったと思う。
とりあえず半年。
半年飲んでみよう。
そう思って続けた。
そして半年後。
増えた感覚は、まったくなかった。
ただ、ここでやめるのも怖かった。
「増えてはいないけど、これを飲んでるからキープできてるのかも」
そう思った。
だから飲み続けた。
ただ、毎月9,000円は高かった。
そこで当時、個人輸入の通販でフィンペシアを買うようになった。
記憶では、3か月分で5,000円くらいだったと思う。
副作用は怖かった。
幸い、僕には強い副作用を感じることはなく、それからずっと飲み続けることになった。
塗るミノキシジルも試した
26〜27歳くらいの頃。
今度はリアップX5を使ってみた。
朝と夜に塗る。
半年くらいは続けたと思う。
でも僕の場合、髪が増えた実感はなかった。
それより大変だったのが、毎日使うことだった。
髪がパキパキになる。
枕に色がつく。
そして、
めっちゃ痒い。
半年くらい使って、
「もう無理!」
やめた。
「絶対飲まない」と思っていたものにも手を出した
その次に考えたのが、ミノキシジルの飲み薬だった。
これは怖かった。
当時の僕は、
「これは絶対飲まない」
と思っていた。
でも、ここまでやっても思うようにはいかない。
そして27歳くらいの頃。
結局、
飲んだ。
すると僕の場合、分かりやすく変わったところがあった。
体毛だった。
手。
足。
足の指。
いろんなところの毛が濃くなった。
「そこじゃない!」
肝心の髪はというと、産毛は増えた。
でも、僕が欲しかったようなしっかりした髪が増えた感覚はなかった。
最初に飲んでいた量では、少し苦しく感じることもあった。
当時は、なんとなくメンタルにも影響しているような気がした。
そこで錠剤を半分にして飲むようになった。
それからは、ほとんど気にならなくなった。
今も飲み続けている。
※ここまでの薬についての話は、あくまで僕自身が当時使ってどう感じたかという体験です。
最終的に磨いたのは、髪のセット技術だった
薬以外のことも試した。
薬も飲んだ。
塗り薬も使った。
でも、僕が期待していたようには髪は増えなかった。
じゃあ、どうするか。
僕が次に磨いたのは、
髪を増やす方法ではなく、髪のセット技術だった。
セルフカットもした。
スタイリング剤もいろいろ試した。
僕の場合は、ワックスよりスプレーをよく使った。
薄いところに髪を持ってくる。
少しずつ調整する。
位置を決める。
最後にスプレーで固める。
これを何度もやっているうちに、かなり上手くなったと思う。
ただ、
自然な髪型だったかと言われると、
そんなことはない。
「無理やり髪持ってきてるな」
そんな髪型だった。
毎日、天気予報で風速を見ていた
それでも僕は、薄毛をオープンにすることができなかった。
まだ若かった。
この歳でハゲ散らかしたまま外に出るなんて、僕にはできなかった。
だから毎回、鏡の前で髪をセットした。
うまく隠れない。
やり直す。
またダメ。
そのうち訳が分からなくなって、一度全部洗う。
そして、最初からやり直す。
そんなことを繰り返していると、涙が出てくることもあった。
「なんで自分だけ、この歳でこんなことしなきゃいけないんだ」
坊主にして、
「僕、薄毛なんです」
とオープンにできたら、どんなに気楽だっただろう。
でも、
僕にはそんな勇気はなかった。
だから風が怖かった。
せっかく作った髪型が崩れるから。
海にも行けない。
プールにも行けない。
温泉にも行けない。
友達と旅行に行った記憶も、ほとんどない。
何かをやりたいと思っても、その前に髪のことを考えていた。
そして毎日のように天気予報を見た。
天気を見るためじゃない。
今日の風速を見て、外に出るか決めていた。
これが、
僕の20代、30代だった。
もう、できることはないと思っていた
ここまでやって、僕はもう諦めていた。
「もう、できることはない」
そう思っていた。
それに当時は、自分のために大きなお金を使うという発想もあまりなかった。
家族にはお金がかかる。
自分は二の次だった。
自分のために1万円使うことすら、ほとんどなかったと思う。
今ではスノーボード用品を普通に買っている。
……ずいぶん変わったものである。
でも当時は、薄毛にさらに大きなお金を使うなんて考えもしなかった。
このまま付き合っていくしかない。
そう思っていた。
離婚して、植毛というものを知った
そんな僕の生活が変わったきっかけが、離婚だった。
その後、コロナ禍になった。
仕事はほぼテレワークになって、いろんなことを調べる時間が増えた。
そんな頃だったと思う。
僕の目に、植毛の情報がよく入るようになった。
それまで植毛について、ほとんど知らなかった。
だから最初に見たときは、
「なにこれ!」
だった。
こんな方法があるの?
そこから、かなり調べた。
有名なクリニックの口コミも見た。
分からないことがあれば、クリニックに直接メールして質問した。
失敗しないのか。
本当に髪は増えるのか。
自分でもできるのか。
不安なことは、できるだけ調べた。
分からなければ聞いた。
そうやって調べていくうちに、
「植毛って、ありなんじゃないか」
と思うようになった。
それでも最後まで残った大きな不安があった。
会社にバレることだった。
この話は、また別の記事で書こうと思う。
髪が増えた未来の自分を想像してしまった
当時の僕は、もう一度結婚したいと思っていた。
でも、
自分に自信がなかった。
もし髪が増えたら。
風を気にしなくてよくなったら。
今までできなかったことが、できるようになったら。
婚活にも、もう少し自信を持って行けるかもしれない。
そんなことを考えた。
そして、
髪が増えた未来の自分を想像してしまった。
「これで人生変わるんじゃないか」
そう思った。
それが、僕が植毛を決めた一番大きな理由だった。
実際、僕が初めて婚活パーティーへ行ったのは、
1回目の植毛をして、
髪が増えてからだった。
コンプレックスは、本人にしか分からない
植毛をしてから、コンプレックスについて思うことがある。
人って、少なからずコンプレックスがあると思う。
美容整形なんかに否定的な意見もある。
もちろん、やるかどうかは本人が決めればいい。
でも、
それがどれだけつらいのかは、本人にしか分からない。
僕にとって薄毛は、ただ髪が少ないというだけの悩みではなかった。
生活そのものに影響するくらい、ずっと気にしていた。
だから今は思う。
お金でその悩みを解決できて、それで人生に笑顔が増えるなら、素敵なことだと思う。
僕の場合は、
それが植毛だった。


コメント